以前に書いた「薬草史」という世界.*に続き、
中世ヨーロッパの医学/薬学の基礎になっていた
四元素説について、書いていきます。
1,四元素説のはじまり
四元素説は、古代ギリシャのエンペドクレス(紀元前490年頃 – 紀元前430年頃)
が唱えたとされています。
その時代、宇宙を構成するのは
火、水、空気(風)、土の四つの元素であり、
人間もまた宇宙と同じように
四つの元素から成ると考えられていました。
宇宙というマクロコスモス(大宇宙)の中に
人間というミクロコスモス(小宇宙)がある。
「人間も宇宙の一部である」と考えられていたのです。
2,体液生理学への応用
その後、同じく古代ギリシャの医師ヒポクラテス(紀元前460年頃 – 紀元前370年頃)により
体液生理学に応用され、四体液説が唱えられました。
四つの元素には、温・湿・冷・乾の四つの性質もあり
それぞれ2つの性質を持つと考えられました。

火と水は反対の性質を持つもの(火:温かい ⇔ 水:冷たい)
空気と土は火と水それぞれの間の性質
(空気:温かく湿っている、湿度
土:冷たく乾いている、土はサラサラしている
というとイメージしやすいでしょうか…?)
3,四気質への応用
そこから500年近くの時が経ち、
ギリシャの医師ガレノス(129年頃 – 216年頃)が四気質論へさらに応用しました。
四つの気質から遺伝的な要素や体質、個性などを分類しました。
火:温・乾:黄胆汁:胆汁質→せっかち、怒りっぽい
水:冷・湿:粘液:粘液質→のんびりしてる、温和
空気(風):温・湿:血液:多血質→明るい、社交的
土:冷・乾:黒胆汁:黒胆汁質→暗い、個性的など…
中世には四元素・四体液・四気質説に占星術の知識も加わり
産業革命時代までの西洋医学の基礎となっていたそうです。

4,なぜ四元素説を学ぶのか
医学や薬学が発達した今、
この古代の説を改めて学ぶことに意味などあるのか?
と思われるかもしれません。
しかし古代の人々が感性を使い観察した四元素は
今でも変わらず存在しているし、
私たちの生活になくてはならないものです。
四元素なくして、私たちは生きていけません。
私はここに命の本質を感じます。
だからこそ、学ぶ価値があると思うのです。
もちろん今と昔では科学的知識も日常も違うので
古代の人々と全く同じ価値観をもつことは難しいでしょう。
それでも私は、少しでもその時代の価値観に
近づいてみたいなと思うのです:-p
